夜の影帽子【エピローグ】吾輩は猫である。名前は…
「ねぇ!僕たちって最高のコンビになると思わない?」
黒猫が耳元で話しかける。子猫とはいえ肩に乗せたまま歩くと段々疲れてくる。
「私とクロが?」
「だから僕はクロじゃないって!!そんな安直な名前つけないでよ!」
「だってミラが付けたんじゃないの!」
「ミラ?」
黒猫は首をかしげる。どうやら前世の記憶は綺麗に消されているらしい。そもそも本当にクロの生まれ変わりなのだろうか?だとしたら不憫で仕方がない。生まれ変わっても全く同じ姿なのだから。
「なんで私に付いてこようと思ったわけ?」
「君を見たときにビビビ!っと感じたんだよ!まさに運命だね!ダダダダーーン!」
クロはこんなにうるさくなかった。やっぱり全く別の黒猫が急に押しかけてきたのだろうか?
「黒マントにとんがり帽子、おまけに黒猫なんか肩に乗せて…私、本格的に魔女だわ。」
「すごく似合ってるよリリィ!これでホウキさえ揃えばあのコンビに近づけるよ!」
「あのコンビ?」
「ほら!あの有名な飛行船事故で取り残された少年を救った魔女と黒猫のコンビさ!」
「知らないけど…。」
「えーー!!!」
「ところで、クロが嫌だったらあなたのことなんて呼べばいいの?」
「んー。ならジャンってどう?」
リリィは立ち止まった。黒猫は顔を覗き込む。
「リリィどうしたの?」
「それ…私の名前。」
「え?リリィの名前はリリィでしょ?」
「うん。そうだね。ちょっクロ、肩疲れたから逆側に…」
「だからクロじゃないってば!!」
「あーーごめんごめん!」
リリィとクロは歩き出す。東の国、アルカホールまで長い長い道のりとなりそうだった。